大きな虫歯の治療に際には神経をとる治療、根管治療が多く行われてきました。歯の神経(歯髄)に近づくと痛みが出やすいため、神経を取る治療が選択されるのです。当医院では神経を残すことが、歯の残存率を上げることが分かっているため、なるべく歯髄を保存してまいりました。少々沁みる症状が合っても、時間が経つとしみなくなり、神経を残すことに成功できるからです。近年は良い薬剤が出てきたため、この沁みるという症状も随分と緩和されるようになりましたので当医院では積極的に覆髄 処置、MTA治療を行っております。
虫歯治療をしていて、神経が近くてもこの方法が当院は可能ですのでご安心下さい。神経の保存できる可能性が格段にあがってきたのです。(この治療法は保険外診療となっております。)

神経をできるだけ残す「歯髄保存治療」を選択することにより、歯そのものの生涯残存率が、無い歯より5−6倍変わります。
直接覆髄法
当院では、直接覆髄法には積極的にMTAセメントを用いて対応しています。
露出した歯髄をMTAで保護し、細菌の再侵入を防ぐよう緊密に封鎖することで、歯の神経を守り、歯そのものの寿命をできるだけ長く保つことを目指すのです。
歯の内部には、血管や神経を含む歯髄が存在します。歯はエナメル質、象牙質、セメント質などの硬組織と、その内部の歯髄から成り、歯髄は栄養供給や痛みの感知、象牙質形成に関わる重要な組織です。
歯髄を失った歯でも機能はできますが、長い目でみると、歯の強度や予後に影響することがあります。日本の診療ガイドラインでは、長期的な歯の保存において歯髄保護が重要であるとされています。

MTA治療とは
MTA治療とは、深いむし歯の除去中に歯髄が露出した場合などに、露髄部をMTAセメントで直接保護する治療です。MTAはカルシウムシリケート系材料で、生体親和性、封鎖性、硬組織形成を促す性質が評価されています。

AAEの声明では、MTAを含むカルシウムシリケート系材料はVital Pulp Therapyで安定した成功が示されており、永久歯における1〜2年の成功率は85〜100%の範囲で報告されています。
MTA治療の目的は、単に「詰めること」ではありません。露出した歯髄を保護し、その上を適切に封鎖し、歯の内部環境を整えることで、歯髄が本来持つ回復力を活かすことにあります。
MTA治療は、すべての深いむし歯で行えるわけではありません。適応は、症状、う蝕の深さ、露髄の状態、出血のコントロール、修復可能性などを総合して判断します。
当院でMTA治療を検討する主なケースは次の通りです。
- むし歯が深く、神経の近くまで進行している歯。
- むし歯除去中に歯髄が露出したものの、保存できる可能性がある歯。
- できるだけ神経を残したいという希望がある方。
- 診査の結果、抜髄ではなく歯髄保存が妥当と考えられるケース。
一方で、何もしなくても強く痛む自発痛が続く場合、炎症や感染が強い場合、保存が難しいと判断される場合には、MTAによる直接覆髄が適しません。ガイドラインでも、術前診断だけで保存可否を完全に見極めることは難しく、術中の歯髄の状態評価が重要とされています。

症状の確認、レントゲン診査、視診、必要な検査を行い、歯髄保存の可能性を慎重に見極めます。
痛みの既往、冷温刺激への反応、打診、X線所見などを踏まえた診断が重要です。
むし歯に侵された部分を丁寧に除去します。露髄時に歯髄の状態を正確に観察するためにも、感染した組織の十分な除去が重要です。
歯髄が露出した場合は、その部位の状態を確認し、洗浄と止血を行います。ガイドラインでも、止血のしやすさや露髄面の状態が、保存可能性を見極めるうえで重要なポイントとされています。
保存可能と判断された場合、露髄部にMTAセメントを置き、歯髄を直接保護します。MTAなどの現代的なカルシウムシリケート系材料の使用が適切です。
その上を適切に封鎖し、修復物で細菌の再侵入を防ぎます。
Vital Pulp Therapy後の成功において、早期かつ適切な最終修復が非常に重要になります。
MTA治療の大きなメリットは、歯の神経を残せる可能性があることです。歯髄保存は、歯の長期保存にとって重要であり、近年はMTAの登場によって、従来よりも積極的に歯髄を守る治療が現実的になってきました。
主なメリットは次の通りです。
- 神経を残せる可能性がある。
- 歯が本来持つ生活反応や栄養供給を保ちやすい。
- 抜髄や根管治療を回避できる場合がある。
- 将来的な歯の寿命にとって有利に働く可能性がある。
MTA治療は非常に有用な選択肢ですが、必ず成功するというものではありません。診療ガイドラインも、推奨は意思決定を支援するものであり、個々の症例では臨床的判断が必要であると明記しています。
また、術前の症状だけで歯髄の炎症の程度を完全に判断することは難しく、実際には術中の所見が大切です。歯髄の直接観察や止血後の状態評価が、症例選択に有用です。
治療後に症状が続く場合や、経過観察の中で保存が難しいと判断される場合には、根管治療へ移行することがあります。そのため、当院では「神経を残すこと」だけを目的にするのではなく、長期的に見てその歯にとって何が最善かを考えて治療方針を決定します。

当院では、歯をできるだけ削らないこと、できるだけ神経を残すこと、そして長期的に安定した状態を目指すことを大切にしています。MTA治療は、その考え方に沿った精密な歯髄保存治療のひとつです。
大きなむし歯で「神経を取るしかないかもしれません」と言われた場合でも、診査の結果によっては、神経を残せる可能性があります。大切なのは、見た目だけで判断せず、歯髄の状態を丁寧に見極め、適切な材料と封鎖で精密に処置することです。
この治療法の登場により格段に神経を保存できるようになりました。まだ『ズキズキ』とした痛みがない場合には十分適応になる可能性とあると考えてよろしいかと思います。
よくあるご質問
いいえ、すべての症例が適応ではありません。歯髄の炎症の程度、感染の広がり、露髄面の状態、止血のしやすさなどを踏まえて判断します。
治療に必ずはありません。適切に処置しても、その後の経過によっては根管治療が必要になることがあります。
一時的に症状が出ることはありますが、重要なのは継続的な経過観察です。術後の症状や反応を確認しながら、必要に応じて対応します。
適切な症例選択、露髄面の評価、止血、MTAの使用、そして細菌の再侵入を防ぐための確実な封鎖と修復です。
