監修:噛み合わせ認定医 河合良治
歯列矯正を考えている方で、迷われるのが、「インビザライン」などのマウスピース矯正か、ブラケット、ワイヤーを使った「ワイヤー矯正」のどちらにするかという点で、大変多く質問をいただきます。
結論から言いますと、ケースバイケースです。
しかし、以前よりマウスピース矯正もできることが多くなってきているのも事実です。
それではどう選択すべきかと言うことをこちらではご一緒に考えていきたいと思います。まず、それぞれが得意なものが異なるので、ご自身の適応はどちらかきちんと調べて選択される方がいいででしょう。なぜ違うのかというと歯列矯正は力学的な要素で歯の移動があるのですが、この力のかかり方が違うから移動のしかたも実は異なるのです。
近年ではマウスピース矯正でもかなりの症例ができるようになってきており、当医院でも新規で矯正で始める方は、75%がマウスピース矯正で、25%がワイヤー矯正となっております。(2024年11月現在)
以下の点から考えてご自身にあう方を選択されてみてください。
歯のずれ具合
あなたご自身の歯はどの程度ずれているでしょうか。そのずれ具合に合わせて矯正をすることができます。
前歯が大きくずれている場合
前歯が大きくずれている場合は、やはりワイヤー矯正、もしくはワイヤー矯正の併用が早く治るのでおすすめです。もちろんマウスピース矯正でもしっかりと使っていただければと治療はできます。
理屈的な観点から言いますと、
ワイヤー矯正は24時間歯に力がかかっている。
マウスピース矯正は取り外している時間がある。
ということですから、ずれが大きくて移動量が多いなら初期のうちにワイヤーを使い、ある程度移動したらマウスピースに移行するというパターンはかなりおすすめでうまく治療することができます。すべてマウスピースで矯正することも可能ですが、エラーが出やすいので、歯科医師によるまめなチェックをお勧めします。
インビザラインとワイヤー矯正の違い
インビザラインとワイヤー矯正の違いについておさらいしておきましょう。
インビザライン
インビザラインは透明なマウスピースを使った「マウスピース矯正」です。患者さま専用に作製したマウスピースを1週間〜2週間のサイクルで交換しながら、歯を動かしていきます。
マウスピースは1日で22時間以上の装着が必要となりますが、食事や歯磨きの際には取り外していつも通り行うことができます。
矯正治療の中では歴史が比較的浅いですが、世界中で採用されており、1700万人以上の実績があります。
参考:インビザライン公式
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さなブロック型の装置をつけ、そこにワイヤーを通して歯に力を伝えることで歯を動かしていく矯正方法です。
最も歴史が古く、どんな歯列の方にも対応することができます。ワイヤーはご自身で取り外すことはできないため、平均月に1回の歯科医院の調整でワイヤーの交換などをしながら治療を進めていきます。
インビザラインとワイヤー矯正のメリットとデメリット
インビザラインとワイヤー矯正にはそれぞれメリットとデメリットがありますので理解しておきましょう。
インビザライン
<メリット>
・透明で目立ちにくい
・いつでも取り外すことができる
・通院回数がワイヤー矯正に比べて少ない
・歯磨きや食事がいつも通りできる
・金属アレルギーの方でも問題なく治療ができる
・歯に装置がついていないので、頬側の違和感がない
<デメリット>
・症例によって治療できないこともある
・自己管理が治療の成否に大きく関与する
・歯と歯の間を削ることがある
・奥歯の噛み合わせが悪くなることがある
・食事ごとにまめな歯の手入れが必須となる
ワイヤー矯正
<メリット>
・どんな症例にも対応できる
・効率的に歯が動かせる
・細かい調整をすることができる
・矯正器具を取り外す必要がない
<デメリット>
・矯正器具が目立ちやすい
・汚れが溜まりやすい
・矯正器具が当たって痛みを感じることがある
・スポーツや楽器をする場合に影響がある
インビザラインの大きなメリットは、矯正器具が目立ちにくいこと、そして取り外しができることです。
ワイヤー矯正の大きなメリットは、常に歯に力が伝わっているので、治療期間の予測がつきやすく、細かい調整や効率的に歯並びを整えることができるため、どんな症例にも対応できることです。
インビザラインでは症例によって治療が難しいこともありますが、ワイヤー矯正では治療できることがほとんどです。
インビザラインとワイヤー矯正はどっちがいい?
先に申し上げた通り、インビザラインとワイヤー矯正はその人のお口の状況や希望によってどっちがいいか決まってきます。
インビザラインがおすすめの人
・とにかく矯正器具を目立たせたくない方
・結婚式などのイベントが控えている方
・スポーツや楽器をされる方
・抜歯がなく歯を動かす距離も短い方
・抜歯が必要でも歯を動かす距離が短い方
・マウスピースの自己管理ができる方
・金属アレルギーの方
ワイヤー矯正がおすすめの人
・矯正治療にあたり抜歯が多い方
・歯を動かす距離が大きい方
・重度の不正咬合の方
・歯を引っ張り出す動きが必要な方
・マウスピースの自己管理が苦手な方
・治療を早めに終わらせたい方
大きな違いとしては、まず不正咬合の状態によってマウスピース矯正がいいか、ワイヤー矯正がいいか別れることになります。
重度の不正咬合の方や抜歯が多い方、歯を引っ張り出す動きが必要な方はインビザラインよりもワイヤー矯正の方が効率的に歯を動かすことができるため、ワイヤー矯正を勧められることがほとんどです。
治療に当たって特に大きな問題がなくインビザラインでも治療が可能な場合は、矯正器具が目立ちにくいという理由で選択される方が多いです。
特にイベントが多い方、スポーツや楽器をされる方、人前で話すことが多い方はインビザラインがおすすめです。
ワイヤー矯正よりもインビザラインがしたい
歯並びの状況などでワイヤー矯正での治療を勧められたという方におすすめなのがワイヤー矯正とインビザラインを併用した「ハイブリッド矯正」です。
これはワイヤー矯正である程度歯を動かした後に、インビザラインで歯並びを整えていく方法で、従来のワイヤー矯正よりもワイヤーなどの矯正装置をつける期間が短いのがメリットです。
できるだけマウスピース矯正で治療をしたいという気持ちもわかりますが、噛み合わせに問題がない健康的な歯並びにするためにはワイヤー矯正の方が良い場合もあります。
綺麗な歯並びのためにも少しの期間我慢して、後半はマウスピース矯正にするといった方法がおすすめです。
まとめ
今回はインビザラインとワイヤー矯正どっちがいい?といったテーマでお話ししました。
インビザラインは透明で薄いマウスピースを使うため、矯正器具が目立ちにくい、そして取り外しができるので食事や歯磨きがいつも通りおこなえるといったメリットがあります。
ワイヤー矯正では、幅広い症例に対応できるためインビザラインでは適応できない様なケースでも治療が可能です。
特に抜歯が多く、歯を動かす距離が大きい方はワイヤー矯正の方がスムーズに治療ができる場合が多いです。
軽度〜中度の不正咬合で抜歯が少ない、またはない方や歯を動かす距離が短い方はインビザラインでも治療が可能ですので、なるべく矯正器具が目立ちにくいものがいい!という方にもおすすめです。
歯科医院でご自身の希望を伝え、歯並びをチェックしてもらいベストな選択肢を教えてもらいましょう。
当院でもワイヤー矯正とインビザラインによる治療をおこなっております。治療についての疑問や不安な点がある方はぜひ一度ご相談ください。
参考:日本矯正歯科学会
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