歯並びを改善しようと、歯科矯正を検討している方で不安に感じる要素の一つに「痛み」があります。歯列矯正で感じる痛みについてここで解説していきます。
痛みの感覚は、閾値で大きく変わるため、個人差、体調の差で変化しますが、ここでは一般的なものを紹介いたします。
歯科矯正は痛みを感じることがある

歯列矯正では確かに痛みを感じることがあります。しかし、この痛みには明確な理由があり、適切な方法でコントロール、軽減することが可能です。20年間の矯正治療経験から、痛みの本質と当医院が行なっている解決法をもとに詳しく解説します。
矯正治療で感じる痛みの種類
矯正治療中に感じる痛みは、主に以下のように区分できます。
装置 調整後の痛み ブラケットやワイヤーを装着したり、調整した際に感じる痛みです。歯が動き始める際の鈍い痛みで、通常2-3日続きます。多くの患者さんが「歯が浮いたような感覚」と表現されます。これはある方法で大きく軽減することができます。
装置が粘膜に接触する痛み ブラケットやワイヤーの端が頬の内側や唇、舌に当たることで生じる痛みです。しかし人間の順応性は素晴らしく次第に避けるような筋肉の動きになり痛みを感じにくくなります。また装置にワックスをつけて接触部を保護する方法もあります。
抜歯時の痛み 抜歯をする時の痛みと抜歯後の傷の治りの痛みと大きく二つにわかれます。
痛みの正体は「力」- 根本的な解決法
このようにみてくると、矯正治療の痛みの大半が歯を動かすために、歯に力がかかることで生じます。歯の周りの歯根膜という組織が圧迫され、炎症反応が起こることが痛みの原因です。歯に力をかけないと歯は移動しないため力をかけるのは必須ですが、この力の負荷を適切にコントロールすることで、痛みも大幅に軽減できるのです。
現代の矯正治療:ニッケルチタンワイヤーの革命
従来の職人技時代 従来の矯正治療では、ステンレスワイヤーを歯科医師が手作業で一本一本曲げて調整していました。これは職人技で、熟練した技術が必要でした。しかし、ワイヤーを曲げるということは、先生の技術レベルや経験によって大きな差が生まれやすく、、中には「痛くて仕方ない」という状況が生まれることもありました。
ステンレスワイヤーは硬く、一度曲げた形を保持する性質があります。そのため、歯に強い力がかかりやすく、結果として痛みも強くなる傾向がありました。
ニッケルチタンワイヤーの登場 現在では、形状記憶合金であるニッケルチタンワイヤーが主流になっています。このワイヤーの革命的な特徴は以下の通りです:
- 形状記憶効果:体温で理想的な歯列のアーチ形状に戻ろうとする
- 超弾性:大きく変形しても元に戻る性質
- 持続的で優しい力:歯に一定の優しい力を持続的にかける
- 温度感受性:体温で最適な力を発揮
これらの特性により、歯に優しい持続的な力をかけることができ、痛みが大幅に軽減されます。また、調整の回数も減らすことができるため、患者さんの負担も軽減されます。
装置による痛みの完全対処法
ワックスの効果的な使用法 ブラケットやワイヤーが頬や唇に当たる痛みは、矯正用ワックスで完全に防ぐことができます。ワックスは以下のように使用します:
- 痛みを感じる装置の部分を清潔に拭く
- 適量のワックスを指で温めて柔らかくする
- 装置を覆うように貼り付ける
- 食事前には外し、食後に新しいものに交換
粘膜保護の重要性 装置による傷は感染のリスクもあるため、適切な保護が重要です。傷ができてしまった場合は、口内炎用の薬を併用することも効果的です。
抜歯に伴う痛みの管理
矯正治療で抜歯が必要な場合、抜歯のタイミングを工夫することで痛みを大幅に軽減できます。一度に複数本抜歯するのではなく、治療計画に応じて段階的に行うことで、患者さんの負担を最小限に抑えることが可能です。
食事時の痛みへの対応
調整後数日間は、以下のような食事の工夫が効果的です:
- 柔らかい食べ物を選ぶ(おかゆ、うどん、スープなど)
- 小さく切って食べる
- 前歯で噛まずに奥歯を使う
- 冷たいものを避ける(知覚過敏が生じる場合)
現代の痛み管理:当院での取り組み
当院では、20年の経験を基に以下のアプローチで痛みを最小限に抑えています:
1. 段階的な力の調整 初回から強い力をかけるのではなく、患者さんの反応を見ながら段階的に力を調整します。
2. 個人差への配慮 痛みの感じ方は個人差が大きいため、患者さん一人一人の反応に合わせて治療計画を調整します。
3. 最新の材料の使用 ニッケルチタンワイヤーはもちろん、より進化した形状記憶ワイヤーを積極的に採用しています。
医院選びの重要なポイント
本当に痛みの少ない矯正治療を受けたいなら、以下の点を確認することをお勧めします:
1. 使用する材料について質問する 「ニッケルチタンワイヤーを使用していますか?」と直接質問してみてください。使用している医院であれば、その特徴やメリットについて詳しく説明してくれるはずです。
2. 痛み管理への取り組みを確認する 痛みに対する考え方や対処法について、具体的な説明があるかどうかを確認しましょう。
3. 調整頻度と方法 どのくらいの頻度で調整を行い、どのような方法で痛みを軽減しているかを聞いてみてください。
まだまだ存在する職人系の先生 現在でも、従来の職人技に頼った治療を行っている先生は存在します。技術力のある先生であれば問題ありませんが、そうでない場合は患者さんが不必要な痛みを感じることになってしまいます。
痛みは治療効果の指標ではない
「痛くないと歯が動かない」という誤解がありますが、これは間違いです。適切な力であれば、痛みを最小限に抑えながらも効率的に歯を動かすことができます。痛みは治療効果の指標ではなく、むしろ適切でない力がかかっている可能性を示すサインと考えるべきです。
まとめ
現代の矯正治療では、適切な材料選択と技術により、痛みを大幅に軽減することが可能です。矯正治療を検討されている方は、ぜひニッケルチタンワイヤーを使用し、痛み管理に積極的に取り組んでいる歯科医院を選択してください。痛みに対する不安で矯正治療を諦める必要はありません。適切な医院選びにより、快適な矯正治療を受けることができるのです。
この痛みの感覚が、個人で違うため、人によっては調整した日は痛くて食事ができなかった、痛みをそこまで感じなかったなどさまざまな感想が見られます。今回は「歯科矯正は痛い」というテーマについてお話ししていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
結論から言いますと、歯科矯正をするにあたって少なからず痛みを感じる場面はあります。以下で痛みを感じやすい場面について詳しくお話ししていきます。
・抜歯による痛み

本格的な矯正治療を始める前に、歯を並べるスペースを確保するため抜歯が必要になるケースがあります。特に大人の方の矯正治療はスペースの確保が難しい方が多く、抜歯になることが多いです。
抜歯をする際には局所麻酔を使うため痛みを感じることはありませんが、麻酔が切れた後に痛みを感じることがあります。
その際には処方された痛み止めを飲むことで痛みを抑えたり、濡れたタオルで冷やしたり、安静にすることで痛みを最小限に抑えることもできます。
抜歯による痛みは2日から3日ほどで良くなりますが、まれに抜歯後に治癒がうまくいかず「ドライソケット」と呼ばれる状態になってしまう方がいます。
ドライソケットは、抜歯後の穴にうまく血餅がたまらずに露出した骨が乾燥して炎症を起こした状態です。原因は圧迫止血が不十分であることや、麻酔の影響、術後の頻回なうがい、口腔衛生状態が悪いことなどさまざまです。
ドライソケットになると強い痛みが続くため、早い段階で歯科医師へ相談しましょう。
当医院では痛みなく抜歯できるように抜歯のタイミングを考えています。
参考:日本口腔外科学会
・矯正器具による痛み

歯を動かすために歯科矯正治療では矯正器具を装着します。ワイヤータイプやマウスピースタイプがあり、患者様の希望やお口の状態によって選択されます。
どちらも歯に装着して力をかけながら歯を動かしていくため、装着したばかりの頃は痛みを感じやすくなります。
<歯が動く仕組み>
私たちの歯とその歯を支える骨(歯槽骨)との間には、歯根膜(しこんまく)という組織があります。
矯正器具でこの歯根膜を圧迫すると、圧迫されている側には骨を吸収する細胞(破骨細胞)、反対側の引っ張られる歯根膜には骨を作る細胞ができます(骨芽細胞)ができることで、歯がゆっくりと動きます。
この骨が再形成される際に炎症が起こり、歯の周りの組織が敏感になって痛みを感じやすくなります。
参考:日本臨床矯正歯科学会
痛みの程度や持続期間には個人差がありますが、お子様の場合で3日間程度、成人では1週間程度痛みが持続することがほとんどです。それ以降になると、痛みは徐々に軽減し、食事もできるようになってきます。
また、ワイヤー矯正ではワイヤー部分が唇や口腔内の粘膜に擦れて口内炎になってしまい、痛みを感じるといったこともあります。
ワイヤーが強く当たらないように、矯正用のワックスをワイヤー部分につけるなど歯科医院で対処してもらえます。
歯科矯正中に痛みを感じる場合の対処法

ここでは矯正治療中に痛みを感じた際にご自身でできる対処法をご紹介します。
冷たいもので冷やす
矯正中に痛みを感じる場合は、痛みを感じる部分を濡れたタオルで冷やしたり、タオルを巻いた保冷剤で冷やしたりすることで痛みが和らぐことがあります。
しかし、抜歯をした後に痛みを和らげようと氷や保冷剤を直接肌につけて冷やしすぎると、血液循環が阻害され、傷の治りが悪くなる原因にもなりますので注意しましょう。
柔らかいものを食べるようにする
特に矯正器具をつけたばかりの頃や、調整日でワイヤーやマウスピースを新しいものに交換したばかりの頃は歯根膜が敏感になっているため、痛みを感じやすいです。
硬いものを食べてしまうと痛みが強くなりやすいので、柔らかい食べ物を食べるようにしましょう。痛みが強い時は柔らかく煮たうどんやお粥などがおすすめです。
痛み止めを服用する
痛みが強く我慢ができないような場合は痛み止めを服用しましょう。矯正治療を行っている歯科医院で相談すると、痛み止めを処方してくれることがほとんどです。
痛み止めを服用する際には必ず用法用量を守って服用しましょう。
まとめ
今回は歯科矯正中に感じる痛みについてお話ししました。矯正治療では器具を使って歯を動かしていくために、歯の周りの組織が敏感になり痛みを感じやすくなります。
特に矯正器具を装着したばかりの頃や、調整日にワイヤーなどの矯正器具を交換した後に痛みを感じやすくなります。
ほとんどの場合は数日も経てば痛みがなくなることがほとんどですが、強い痛みが何日も続くようであれば他の問題がある可能性がありますので、歯科医師に相談しましょう。
痛みがある時は、冷たいタオルで頬を冷やしたり、痛み止めを飲むなどして対処してください。また矯正期間中は常に歯の周りが敏感になっている状態です。
痛みを悪化させないためにも抜歯をした後は安静にしている、痛みがある時は硬い食べ物を食べないなどご自身でも気をつけましょう。
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