歯並びを整える「歯科矯正」は、美しい笑顔をつくるだけでなく、噛み合わせの改善や将来的な歯の健康維持にもつながります。
しかし、「矯正でどうやって歯が動くの?」「あのワイヤーは何をしているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
ここでは、歯科矯正の基本的な仕組みから、歯が動く科学的なメカニズム、治療の流れや装置の種類まで、わかりやすく解説します。
歯科矯正とは?目的と基本の考え方

歯科矯正とは、矯正器具を使い、歯の位置を少しずつ正しい位置に整えていく治療です。
見た目を整える審美的な目的だけでなく、噛み合わせを改善して食事や発音をしやすくしたり、将来のむし歯・歯周病を防ぐなど、機能面でのメリットも大きいのが特徴です。
しかし、噛み合わせをしっかりと治せる歯科医師は少ないのが現状です。
歯並びが乱れたままだと、歯みがきがしにくくなり、汚れが残りやすくなります。結果として、むし歯や歯ぐきの炎症を引き起こすリスクが上がってしまうのです。
矯正治療は、見た目の美しさだけでなく、「歯の健康を守るための長期的な投資」とも言えます。
歯が動く仕組み|矯正のメカニズム

歯は骨の中にしっかりと固定されているのに、矯正治療で少しずつ動いていくのは何故? これは、歯の周囲にある「歯根膜(しこんまく)」と「歯槽骨(しそうこつ)」という組織が大きく関わっています。
歯根膜の役割
歯根膜は、歯の根と骨の間にある薄い膜で、わずか0.2 mmほどの厚さしかありません。 この膜は、クッションのように噛む力を吸収したり、歯の位置を感知するセンサーのような働きをしています。
矯正力による骨の変化
- 押される側(圧迫側):骨を溶かす「破骨細胞」が活発になり、歯が動ける空間を作る。
- 引っ張られる側(牽引側):骨を作る「骨芽細胞」が働き、新しい骨を形成する。
この「骨の吸収と再生」が繰り返されることで、歯はゆっくりと新しい位置に移動していきます。 つまり、矯正は歯を“押し込む”のではなく、体の自然な細胞反応を利用して歯を動かす生物学的な治療なのです。
参考文献: Mechanistic Insight into Orthodontic Tooth Movement(PMC)
Molecular and Biological Aspects of Orthodontic Tooth Movement(MDPI)
歯科矯正の治療の流れ

ここでは実際に歯科矯正はどのような流れで進んでいくかについてお話ししています。
1. カウンセリング・初診相談
まずは歯並びや噛み合わせの悩みを伝え、矯正が必要かどうか、どのような治療方法が適しているかを相談します。
2. 精密検査と診断
レントゲン撮影、歯型の採取、口の中の写真などをもとに、歯の傾きや骨格の状態を詳しく分析します。 その結果をもとに、治療計画や期間、費用などが決まります。
3. 矯正装置の装着
- ワイヤー矯正(ブラケット矯正):歯の表面にブラケットをつけ、ワイヤーの力で歯を動かす方法。あらゆる症例に対応できます。
- 裏側矯正(舌側矯正):装置を歯の裏側に取り付ける方法で、見た目に気づかれにくいのが特徴です。
- マウスピース矯正(インビザラインなど):透明なマウスピースを段階的に交換しながら歯を移動させる方法。取り外し可能で目立ちにくく、近年人気があります。
4. 調整・通院期間
治療中は1〜2か月に1度のペースで通院し、ワイヤーの交換やマウスピースの進行確認を行います。 歯が動くスピードには個人差がありますが、全体的な治療期間は1年半〜3年ほどです。
5. 保定(リテーナー)期間
歯が理想の位置に並んでも、そのままでは骨が安定しません。 再び元の位置に戻らないように「リテーナー」と呼ばれる保定装置を装着し、数年かけて定着させます。
矯正治療を成功させるためのポイント

弱い力でじっくり動かす
強い力で一気に動かそうとすると、歯の根や骨に負担がかかります。 矯正では「持続的で優しい力」をかけることが重要です。 参考:How orthodontic forces affect alveolar bone remodeling(DF Orthodontics)
日々のセルフケアが重要
矯正装置(特にブラケットやワイヤー)を付けていると食べかすが残りやすく、むし歯や歯肉炎になりやすくなります。 普段の歯磨きはもちろん、フロスや歯間ブラシなど補助清掃用具を活用し、丁寧なケアを心がけましょう。
矯正専門医の選択
同じ装置を使っても、治療結果は医師の経験と計画によって大きく変わります。 矯正をおこなう歯科医師の方針が自分も理解できるものか、方針を理解した上で治療を受けることが、安心と成功につながります。
まとめ|矯正の仕組みを知って前向きにスタート
歯科矯正は、骨と細胞の自然な働きを利用して歯を動かす治療です。 時間はかかりますが、その分だけ確実な効果が得られ、見た目だけでなく噛み合わせや健康面でも大きなメリットがあります。
仕組みを理解しておくことで、治療中の不安も少なくなり、前向きに矯正生活を送ることができるでしょう。 将来の自分の笑顔のために、今から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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