お口全体の治療をしようと決心した時に、インプラントもやりたい!、矯正もやりたい!と相談にいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。どちらが先でしょうか?と質問を多く受けます。結論から言いますと、一緒にやりたいならまずは矯正が先がセオリーです。しかしケースによってはインプラントを同時に行っても良いこともあります。
こちらの記事では、これらの考え方をご案内させていただきます。
インプラントと歯列矯正の併用治療の考え方
たしかに、歯を一本ずつ治療するのが当たり前になっている日本の歯科医療では、一般的な歯科医院に行っても欲しい回答が得られないのは致し方ないことかもしれません。

インプラント、矯正、そして全体の噛み合わせ。これらを絡めたお口全体の総合治療を希望される場合、どう考えたらいいのかをここではご紹介いたします。
一般的な歯科治療ではあまり馴染みがないと思いますが、全顎的な治療を行うには、しっかりとプランニングが必要です。まずはあなた自身がしっかりと理想を知りゴールを持てるといいでしょう。自分の口がどれくらい治療ができるかわからない?そんな時は総合治療を得意とする歯科クリニックへご相談されてください。
なぜなら、歯科医院は名称こそどこでも同じ歯科医院ですが、クリニックによって方針はバラバラだからです。
ましてやインプラント・矯正・噛み合わせなど絡めた全体のバランスを見据え診断し、治療計画を立てる診療は、日常的に行われているわけではないからです。アメリカ矯正学会のページ
※もしあなたが歯の長期的な健康を大切にしたいのであれば、全顎的な治療を一気にやってしまう大手の歯科クリニックはあまりお勧めできません。予防も噛み合わせのコンセプトも皆無だからです。砂上の楼閣とならぬようにご注意ください。
1. インプラントと矯正、どっちが先?順番を決める最大のポイント
インプラントを入れようと思ったけれど歯並びも悪い、逆に、矯正をしたいけれど歯がない部分にインプラントも入れたい。
このように悩まれた際、一番大切なのは「最初にゴール(完成形)を作っておくこと」です。「とりあえずやってみる」と後から色々と取り返しが効かないことが多いのが矯正やインプラントなのです。

矯正する前によくあるエラー
- 矯正したくなると思っていなくて、既にインプラントをしてしまった。
- 奥歯がないのに矯正をしたらなかなか進まない。
これらは、相談時によくあるエラーです。
「将来矯正したくなるとは思っていませんでした。」
時と場合により色々と人は変わりますからね。ただインプラントを動かすことはできませんが、ただしインプラント以外は矯正することができるので、移動できないところと動かせるところを考えてできる限りの矯正をするということは可能です。
「え??インプラントって動かないんですよね?」
はい、動きません。ただ対応策はありますのでのちほどご紹介します。
実はここには、一般的な「歯並び治療」だけでは語られない、“口全体をどう設計するか”という視点が必要になります。
噛み合わせ治療・包括歯科治療を行う歯科医の視点から、
- インプラントと矯正は同時にできるのか
- なぜ順番が重要なのか
- インプラントがあると矯正は難しくなるのか
- 長持ちする治療に必要な「診査診断」とは何か
について、できるだけ分かりやすく解説します。
インプラント入れようと思った。でも歯並びも悪い。ではどのようにすすめるといいのだろうか
もしくは
歯並びや噛み合わせが悪いから矯正をしようと思った。でも歯のないところにはインプラントも入れたい
このように思ってここにたどりつく方もおおいでしょう。ではどのように考えていけばいいのでしょう。
とくに大切なのは、
あなたの理想のゴールから、では自分の場合はどうなるのか?と考えた時に、逆算して考えていくのがポイントです。
(当医院ではあなたのお口の状況に合わせてプランニングできます。)歯科ドック
インプラントと矯正の順番については、実は「どちらが先もあり得る」のが結論です。矯正して歯が並んだ所にインプラントを入れるケースもあれば、先にインプラントを打ち、それを固定源として利用しながら矯正を進める戦略的なケースもあります。

しかし、先に知っておいて欲しい事実が1つあります。 それは、「一度骨に定着したインプラント(人工歯根)は、矯正治療で動かすことができない」ということです。
だからこそ、家を建てるのと同じように、まずはしっかりとした「設計図」を作り、戦略的に治療の工程を組み立てていく必要があるのです。
2. 基本セオリー:「矯正が先」となるケースとその理由
原則として、インプラントと矯正を行う場合、多くのケースでは「矯正」を先行させます。
なぜ矯正が先なのでしょうか?
その最大の理由は、「矯正治療による歯の移動には個人差が非常に大きく、将来インプラントを埋入する部位のスペースを、1ミリの狂いもなく事前に予測・コントロールすることが極めて困難だから」です。
人の口腔内は、骨の硬さ、密度、歯の根の形、周囲の筋肉の強さ、さらには年齢や生活習慣によって、歯がどのように動くか、どのくらいの期間がかかるかは一人ひとり全く異なるのです。
要注意!先にインプラントを打って後悔する失敗例
もし、先に「とりあえず歯がないから」と先にインプラントを入れて固定してしまった場合、どうなるでしょうか。
矯正治療を進める中で「インプラントが動かないから、これ以上歯を理想の位置へ動かせない」という致命的な壁にぶつかってしまいます。後から「やっぱりここの歯をもう少し下げたい」「全体のアーチを微調整したい」と思っても、骨と強固に結合したインプラントは絶対に動いてくれないのです。そしてインプラントの撤去はとても大変な外科処置だからです。
インプラントの埋入は、
歯の移動が大まかに完了し「あとはここにインプラントを入れてそれを利用する」というアプローチが最も確実なアプローチです。
3. 高度なアプローチ:インプラントを「先」にする戦略的ケース
一方で、あえてインプラントを先に入れることで、非常に効果的な治療ができるケースもあります。これはお口全体を俯瞰できる精緻な設計図があって初めて成り立つ、高度なアプローチです。
インプラントを矯正の固定源(アンカー)として活用する
矯正治療は「作用と反作用」の力で歯を動かすわけですが、あえて「絶対に動かないインプラント」を先に入れ、そこを強固な支点(アンカー)にして他の歯を引っ張るという戦略です。これは主に奥歯に歯がない時に利用されます。それでも歯の移動に確実性が乏しい場合は、当医院では撤去可能な「骨とは定着しないスクリュー(ミニインプラント)」を利用し、矯正治療を行います。学会の紹介ページ
治療期間の短縮と質の向上を両立させる
天然の歯同士を引っ張り合う通常の矯正では、動かしたくない歯まで引っ張られてしまうことがよくあります。しかし、インプラントを支点にするこの手法を用いれば、動かしたい歯だけを狙った方向へ正確に移動させることが可能になり、より確実で質の高い仕上がりが期待できます。ただし適応しやすい場所は限られているので、緻密なプランニングをするようにしてください。
さらに、インプラントが骨と結合するまでの待機期間(数ヶ月)を、矯正治療の期間と同時進行できるため、患者さんのトータルの治療期間と身体的負担を大幅に軽減できるという大きなメリットがあります。
4. インプラントと矯正を併用する場合の期間と費用の目安
「両方やるとなると、期間も費用も倍になるのでは?」と不安に思う方も多いですが、戦略的に計画を立てることで、効率よく治療を進めることが可能です。
治療期間:同時進行で数ヶ月〜半年の短縮も可能
別々に治療を行うと「矯正期間(2〜3年)」+「インプラント期間(数ヶ月)」と長い歳月がかかります。しかし、当院のように一括プランニングを行う場合、インプラントが骨と結合する待機期間(約3〜6ヶ月)の間に矯正治療を同時進行させることができます。これにより、トータルの治療期間を大幅に短縮することが可能です。
費用の考え方:部分最適ではなく「全体最適」でコストを抑える
費用は一般的に「矯正費用」と「インプラントの本数分」の合算になります。一見高額に思えますが、最初に精密な設計図を作ることで、「実はインプラントは1本減らせる」「矯正で隙間を閉じればインプラント自体が不要になる」といったケースも珍しくありません。行き当たりばったりの治療を繰り返すよりも、生涯的な再治療リスクを抑えられるため、結果として生涯コストを低く抑えることができます。

5. 失敗を避けるために!併用治療で絶対に知っておくべき注意点
インプラントと矯正の併用はメリットが大きい反面、非常に高度な診断が求められます。後悔しないために、以下の2つの注意点を押さえておきましょう。
インプラント周囲炎のリスク管理
矯正器具がついている期間は、通常よりもお口の中の衛生管理が難しくなります。インプラントは天然歯よりも細菌感染に弱いため、治療期間中も徹底したプロによるメインテナンスと、正しいセルフケアの指導を受けられる環境を選ぶことが重要です。

事前の精密な噛み合わせ診断(歯科ドック)が必須
歯並びという「見た目」だけを整えても、顎の関節や全体の噛み合わせのバランスが崩れていれば、インプラントに過度な負担がかかり寿命を縮めてしまいます。治療を開始する前に、口腔内全体を立体的に捉える精密な診査・診断が不可欠です。
4. すでにインプラントが入っていると矯正は絶対にできない?
「数年前に他院でインプラントを入れてしまったから、もう矯正は無理ですよね…」と諦めている方も少なくありません。
諦めないで!上部構造(被せ物)を外して調整する選択肢
完全ではないですが、諦める必要はありません。たしかに、顎の骨に埋まっているインプラント体(根っこの部分)はピクリとも動きません。しかし、その上に被っている「上部構造(被せ物)」は外したり、形を作り直したりすることが可能です。
インプラント体の位置と前後の歯の位置という限界は変わりませんが、被せ物の大きさは変えることは可能なのです。一度外し、他の天然歯を矯正で理想の位置に動かした上で、新しく構築した正しい噛み合わせに合わせてインプラントの被せ物を新調する。このアプローチをとることで、現在の条件の範囲内でベストな噛み合わせと理想の美しさを追求することは可能です。
5. 矯正とインプラント、別々の医院で治療するリスクとは?
インプラント担当医と矯正担当医が別々のクリニックに在籍し、両者が連携して治療を成功させることは「本来の理想的な形」と言えます。
別々のクリニックであっても、それぞれの担当医が「患者さんの最終的な口腔環境」という共通のゴールを持ち、密にコミュニケーションを取れるのであれば、素晴らしい結果を生むことは可能です。
しかし、残念ながら現実の歯科医療の現場では、噛み合わせに関してそれぞれのドクターの慣習で行うことが一般的であり、そこまで緻密に矯正を担当してくれる矯正医があまりいないのが現状です。特に歯並びこそ上手く並べても、噛み合わせをしっかりと仕上げてくれる矯正医を見つけるのが、非常に困難なのが実情です。インプラントを矯正後に入れてくれる歯科医師はたくさんいますが、その上の被せ物をしっかりと正確な噛み合わせで作製するというのもまた難しいのが現状です。
なぜなら、日本の多くの歯科医院は「1本の歯をどう治すか」という部分的な治療に特化しており、一口腔単位(お口全体)での総合的な診断、特に「予防」と「噛み合わせ(咬合)療法」に徹底したこだわりと一貫した治療哲学を持つクリニックは皆無に等しいからです。
結局どんなに頑張ってやった治療でもそれが長期的に持続されないと意味をなさないと考えるのが私たちの歯科クリニックです。
まとめ:総合的な治療を成功させるために
- 治療の手順の正解はあなたのお口から逆算される、最終ゴール(完璧な噛み合わせ)の設定が最重要。
- 歯の動きには個人差があるため、基本は「矯正が先」。行き当たりばったりのインプラントは厳禁。
- すでにインプラントが入っていても、被せ物の工夫で理想に近づける道はある。
- 全体を見渡した「設計図」を作り、予防から噛み合わせまで共通の治療哲学を持った環境を選ぶことが成功の鍵。
インプラントも矯正も、単なる見た目の改善や欠損の穴埋めではなく、生涯にわたって健康に噛み続けるための重要なプロジェクトです。
あなたにとって最適な治療の順番と設計図を知るためには、まずは現在のお口の状況を正しく把握することが第一歩です。当院では、全体の噛み合わせから予防までをトータルで診断する「歯科ドック」を行っております。他院で断られた方や、順番で迷っている方も、ぜひ一度あなたの理想のゴールについてご相談ください。
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補足:インプラントと矯正は同時にできるのか?
インプラントと矯正を同時にしないといけないケースもよくあります。
奥歯がまるでないのに、そのままにしておくと前歯は開いてきます。早期に奥歯にインプラントを入れて噛み合わせを整えて、前歯を矯正するという方法を取ります。奥歯が全部ないのは稀なので、こちらで書いておきました。
こういう場合は「インプラント治療」「矯正治療」を別々に考えないようにしましょう。
- 歯並びが乱れたままインプラントだけを進めることありうる。
- 噛み合わせが不安定なまま矯正を進めるのも仕方ないことです。
- 奥歯の支えが弱いまま前歯だけ整えるのはすぐ悪くなる典型例です。
