執筆・監修:池袋同仁歯科クリニック 河合良治
歯を失ったときの治療方法としてインプラントを提案されたものの、インターネットで「インプラントはやめたほうがいい」「後悔した」といった情報を見て、不安になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいうと、インプラントは決して「やめたほうがいい治療」ではありません。条件が合えば、失った歯の機能を回復し、周囲の歯を大きく削らずに治療できる有力な選択肢です。
ただし、すべての方に同じように適しているわけではありません。外科手術が必要で、骨や歯茎の状態、全身の健康状態、治療後のメンテナンスなどを考慮する必要があります。大切なのは、メリットだけでなく注意点も理解し、ブリッジや入れ歯も含めて自分に合った方法を選ぶことです。
この記事では、「なぜインプラントはやめたほうがいいと言われるのか」を整理しながら、治療を検討する前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

インプラントはやめたほうがいい?そう言われる理由とは
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付けて、失った歯を補う治療です。
一方で、手術が必要になること、治療期間や費用がかかること、治療後も継続した管理が必要になることから、「できれば避けたい」と感じる方もいます。また、術後の腫れや痛み、インプラント周囲の炎症などのリスクもゼロではありません。
ただし、リスクがあることと、治療そのものが悪いことは別です。適切な検査と診断を行い、治療後まで含めて管理できる条件が整っているかを確認することが重要です。
インプラントで後悔しないために知っておきたい7つのこと
① インプラントは天然の歯とまったく同じではない
インプラントは、自分の歯に近い感覚で噛む機能を回復できる治療ですが、天然歯と構造は異なります。天然歯には歯根膜という組織があり、歯と骨の間でクッションのような役割をしています。インプラントにはこの歯根膜がありません。
そのため、インプラントを長く使うには、人工歯根を入れる位置だけでなく、上に作る歯の形や噛み合わせまで考える必要があります。
② 外科手術が必要になる
インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科処置を行います。通常は局所麻酔を使用しますが、術後に痛みや腫れ、出血がみられることがあります。
また、埋入する部位によっては神経・血管・上顎洞など周囲の組織への配慮も必要です。こうしたリスクを抑えるため、CTなどで立体的に骨や周囲の組織を確認し、治療計画を立てることが大切です。
③ 骨の状態によって治療方法が変わる
インプラントを安定させるには、人工歯根を支える骨が必要です。歯を失ってから時間が経っている場合や、歯周病などによって骨が減っている場合には、そのままでは治療が難しいことがあります。
骨を増やす処置などによって対応できる場合もありますが、治療期間や負担が増えることもあります。「インプラントを入れられるか」だけでなく、「どの程度の処置が必要になるか」まで確認しておきましょう。
④ インプラント周囲炎に注意が必要
インプラント自体は虫歯になりませんが、周囲の歯茎や骨には炎症が起こることがあります。インプラント周囲炎は、インプラント周囲の組織に炎症が起こり、支持する骨が失われていく病気です。
2018年の国際的なコンセンサスレポートでは、インプラント周囲炎はプラークと関連する病的状態で、粘膜の炎症と進行性の骨喪失を特徴とすると整理されています。治療後も、毎日の清掃と歯科医院での定期的な確認が欠かせません。
海外文献:Berglundh T, et al. Peri-implant diseases and conditions: Consensus report (2018)
⑤ 治療期間と費用を事前に確認する
インプラントは一般的に自由診療となり、ブリッジや保険の入れ歯と比べて費用が高くなることがあります。また、人工歯根と骨が安定するまで待つ期間が必要になるなど、治療完了まで数か月かかる場合があります。
骨造成など追加の処置が必要な場合には、さらに期間や費用が加わることもあります。治療を始める前に、最終的な人工歯まで含めた費用と、おおよその治療期間を確認しておくと安心です。
⑥ 噛み合わせと周囲の歯とのバランスも大切
インプラントは、一度骨と結合すると天然歯のように矯正治療で移動させることが難しくなります。そのため、将来矯正治療を考えている場合には治療の順番も重要です。
また、失った歯の部分だけを見るのではなく、残っている歯の状態や噛む力のかかり方、お口全体のバランスを考えて設計することが大切です。
⑦ 治療後もメンテナンスが必要
インプラントは「入れたら終わり」の治療ではありません。長く使うためには、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスが必要です。
歯茎の炎症、周囲の骨の変化、噛み合わせ、人工歯やネジの状態などを定期的に確認します。治療後も通院を続けられるかどうかは、治療を選ぶ際の大切な判断材料です。

インプラントをすぐに始めず、慎重に検討したいケース
インプラントを希望していても、現在のお口や全身の状態によっては、まず別の治療や環境改善を優先したほうがよい場合があります。
例えば、歯周病が十分に管理されていない場合は、先に歯周病治療を行うことが重要です。喫煙習慣がある方、糖尿病などの全身疾患がある方、骨の代謝に影響する薬を使用している方などは、状態に応じて慎重な判断や医科との連携が必要になることがあります。
これらに当てはまるからといって、必ずインプラントができないわけではありません。大切なのは、現在の状態を把握し、リスクをできるだけ小さくしたうえで治療の適応を判断することです。
インプラントはどのくらい長く使える?
インプラントの寿命を一律に「何年」と決めることはできません。治療部位、骨や歯周組織の状態、清掃状態、喫煙、噛む力、メンテナンスなど多くの条件が関係します。
2019年のシステマティックレビューでは、現代的なインプラントシステムを対象とした研究をまとめた結果、インプラントの10年後の生存率は、通常の解析では96.4%、脱落したケースも考慮した解析では93.2%と報告されています。つまり、治療から10年後も、約93〜96%のインプラントが機能しているという結果です。
これは「誰でも10年大丈夫」という意味ではありませんが、適切な条件と管理のもとで長期間機能する可能性がある治療であることを示す資料の一つです。
長持ちさせるためには、治療前の診断だけでなく、治療後の清掃と定期的なチェックを継続することが重要です。
池袋同仁歯科クリニックが大切にしているインプラント治療
当院では、インプラントを「歯がない場所に人工歯根を入れるだけの治療」とは考えていません。まず、なぜその歯を失ったのか、残っている歯や歯周組織はどのような状態なのかを確認します。
インプラントが適している場合には、CTなどで骨や周囲組織の状態を確認し、噛み合わせや清掃性も考慮して治療計画を立てます。また、ブリッジや入れ歯のほうが適している条件であれば、インプラントだけにこだわる必要はありません。
目標は、インプラントを入れることではなく、治療後も残っている歯を含めて、お口全体をできるだけ長く安定させることです。
詳しくはこちら:池袋同仁歯科クリニックのインプラント治療

まとめ|インプラントはやめたほうがいい?大切なのは自分に合った治療を選ぶこと
インプラントは、決してやめたほうがいい治療ではありません。
失った歯の機能を回復し、周囲の健康な歯を大きく削らずに治療できるというメリットがあります。
一方で、手術に伴うリスクやインプラント周囲炎、治療期間や費用など、事前に知っておきたい注意点もあります。
インプラントが適しているかどうかは、お口の状態や全身の健康状態、患者さんの希望によって異なります。
治療を急いで決める必要はありません。
まずは現在のお口の状態を確認し、ほかの治療方法とも比較しながら、納得できる方法を選ぶことが大切です。
