マウスピースを使った矯正治療のインビザラインは矯正器具が目立ちにくいため、若い方や社会人にも人気の治療法です。
従来のワイヤー矯正とは異なり、透明で薄いマウスピースを装着するのですが、どのようにして歯が動いていくのかインビザラインの仕組みについて気になる方もいるのではないでしょうか?
今回はインビザラインで歯が動く仕組みとその独自性やメリットについて詳しくお話ししていきます。
インビザライン矯正とは

インビザラインは1999年にアメリカで誕生したマウスピース矯正です。
まだまだ歯列矯正でといえばワイヤー矯正であった時代に、矯正治療の不便さや辛さを解消できないかと発案されたのがインビザラインのマウスピース矯正でした。
今では世界中で採用され、マウスピース矯正トップシェアを誇る治療法になっています。
インビザラインで歯が動く仕組み
インビザラインでは薄いマウスピースを装着して、歯に力をかけながら歯を動かしていきます。
歯列矯正で歯が動くカギが「歯根膜(しこんまく)」と「歯槽骨(しそうこつ)」です。
歯根膜は、歯が埋まっている骨(歯槽骨)と歯のセメント質の間に存在する組織で、厚さわずか0.2mmから0.3mmほどの膜に覆われています。
参考:日本歯科医師会
矯正器具により歯に力を入れると押された側の骨が吸収されていく(破骨細胞)が活性化し、歯が動いてできたスペースには再び骨が再生される(骨芽細胞)が活性化することで、骨の吸収と再生を繰り返しながら歯が動いていきます。
インビザラインのマウスピースは患者様専用に作られますが、歯を動かしたい方向へ誘導していくような形状で作られているため、微妙に歯並びとは異なる形になっています。
そのため新しいマウスピースをつけたばかりのころはマウスピースがきつく感じます。これはマウスピースによって歯が動かしたい方向に押されているためで、この力がかかることで骨の吸収と再生が行われていきます。
インビザラインで行われる処置

インビザライン治療ではマウスピースを装着する以外にも歯を動かすために様々な仕組み、工夫があります。
◼️アタッチメント
アタッチメントとは、歯の表面に作るコンポジットレジンと呼ばれる樹脂の素材の突起です。
ブラケット矯正のようにしっかりと歯を掴むためにこれを装着します。このアタッチメントには歯の動きを誘導する働きがあり、透明なマウスピースに優しく力を加えることで、効率的に歯に力がかかるようにするための処置です。
患者様のお口の状態によって、アタッチメントがつく部位や数は異なります。
アタッチメント自体は小さく、白い樹脂なので目立つことはありません。まれにアタッチメントが取れてしまうことがありますが、放置せずに歯科医院へ連絡して再びつけてもらいましょう。
引用:インビザライン公式HP
◼️顎間ゴム
顎間ゴムとは上下の歯に医療用のゴムをかけ、歯並びを誘導しながら動かしていく処置です。アタッチメントとは異なり、患者様自身でゴムをかけたり、外したりする必要があります。
インビザラインでは、マウスピースの縁がフックのようになって、そこにゴムをかける方法と、歯に直接ゴムをかける突起を作り、ゴムをかける方法があります。
ゴムのかけ方は様々で、患者様の歯並びに合わせたゴムのかけ方を歯科医師から説明されます。
◼️ディスキング(IPR)
インビザラインでは、歯が動くスペースを確保するために、歯と歯の間をごくわずかに削る処置を行います。
この処置は「ディスキング」または、「IPR(InterProximal Reduction)」と呼ばれ、特に抜歯をしないケースでよく行われます。
歯を削るといっても、歯の表層であるエナメル質を約0.1〜0.5mm程度削る程度ですので、痛みやしみが出ることはありません。
インビザラインの独自性とメリット

ここでは、インビザライン治療の大きな特徴とメリットについてお話ししていきます。
ほぼ全ての工程がデジタルで行われる
インビザラインはマウスピースを作成するための歯の型取り、矯正治療の計画立案、シュミレーション、マウスピースの作成などほぼ全ての工程がデジタル化されているため、安定した治療につながっています。
インビザラインではiTeroと呼ばれる専用のスキャナーがあり、小型のカメラで歯をスキャンすることで歯型を採取することができます。
特に従来の型取りが苦手、できるだけ通院の回数を減らしたいという患者様には負担が減るためインビザラインはおすすめです。
クリンチェックによって治療計画の立案や修正ができる
インビザラインにはクリンチェックと呼ばれる独自のシュミレーションソフトが存在します。
このクリンチェックは、世界中から集められた膨大なデータを元に作成されているため、日々アップデートされており、精密なシュミレーションが可能になっています。
クリンチェックではコンピューター上で実際に歯が動いていく様子を3Dで確認できるため、患者様にも一緒に見てもらうことができ、治療へのモチベーションにも繋がります。
幅広いケースに対応できる
インビザラインは比較的歴史の浅い矯正治療法ですが、世界中でシェアされていることや膨大なデータ量を持っていることから、日々進歩をしており、現在では幅広い症例に対応できるようになっています。
マウスピース矯正は軽度から中等度の不正咬合にしか対応できないといったイメージがありますが、以前ではワイヤー矯正でしか治療が難しかったケースでも、インビザラインで治療が可能なケースが多いです。
独自の特徴
SmartForce技術
SmartForce(スマートフォース)技術は、インビザライン独自の歯牙移動コントロール技術です。歯の表面に装着する「アタッチメント」やアライナー自体の形状を最適化することで、歯にかかる力の位置・方向・強さを精密にコントロールします。
最適化アタッチメント
歯の表面に小さな樹脂製の突起(アタッチメント)を設置し、アライナーと連動して複雑な歯の動き(挺出、圧下、回転、根の移動など)を可能にします。
アライナーアクチベーション
アライナー表面の特定部位を特殊成形し、アタッチメントと連携して最適な力を歯に加える「SmartForce Aligner Activation」も導入されています。これにより、アタッチメントを最小限に抑えつつ、予測可能かつ効率的な歯牙移動が可能です。
SmartTrack素材
SmartTrack(スマートトラック)素材は、インビザライン専用に開発された医療用熱可塑性ポリウレタン樹脂です。この素材は8年以上の研究を経て開発され、従来のアライナー素材よりも高い弾性と柔軟性を持っています。
- 持続的なフォース
マウスピースを装着している期間を通して、歯に加わる力(フォース)が持続的かつ安定して発揮されるため、歯の移動コントロールが向上します。従来のマウスピース素材だと変形しやすく変形すると歯にうまく力がかからないため、移動のロスが起こります。 - 高いフィット感
柔軟な素材により、歯やアタッチメント、歯間空隙にぴったり密着。これにより治療精度が高まり、計画通りの歯の動きが実現しやすくなります。 - 快適な装着感と審美性
柔らかくて薄い素材なので、装着時の違和感が少なく目立ちにくいという特徴があります。 - 着脱のしやすさ
柔軟性が高いため、アライナーの着脱が容易で、日常生活への負担が少ないです。 - 素材の構造3層構造
スマートトラックは3層構造で作られており、硬さ・粘性・弾性をバランスよく備えています。
まとめ
今回はインビザラインの特徴と独自性やメリットについてお話ししました。インビザラインでは世界でトップシェアを誇るマウスピース矯正です。
ほぼ全ての工程がデジタルで行われ、患者様の負担の少ない矯正治療として数ある矯正治療の中でも不動の人気を誇っています。
以前にワイヤー矯正でしか治療が難しいと言われた方もインビザラインで治療が可能になっていることもありますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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